(前山なつのさん 大学4回生)
「人」「自然」「音楽」が自分の軸にある
聞き手:前山さんには、「人」「自然」「音楽」という軸があるとのこと。その軸を形成するきっかけはあったんですか。
前山:私は今、国際的な交流を行うサークルに入っていて、その一環でフィリピンに出向いたことがあったんです。そこはスラム街の近くの田舎だったんですが、本当に何もなくて。井戸水や雨水でやりくりしたりするような地域でした。だけど現地の人は、初めて会う私たちに何も言わずにベッドを貸してくれたり、本当に心が豊かだった。そこで、今まで国際支援を目的に活動していたけれど、私たちにできることは何もないと気づいて、それと同時に「この人たちと一緒に何かがしたい」「この人たちが好きだ」という感情が芽生えたんです。そこで、「人」という言葉がキーワードの一つになりました。
「自然」に関しては、今秋田の大学に通っているのですが、そこで畑作業などをする中で自然に触れた中で、私の中で大切なものになったんです。
聞き手:もう一つは、「音楽」。前山さんはオーケストラをされた経験もあまりないとのこと。「音楽」を軸に掲げている理由は何でしょうか。
前山:小さい頃から音楽が好きでした。小学校の合奏で、みんなと一緒に演奏するのが楽しかったし、合唱が盛んな中学で歌ったり伴奏したりすることも好きでした。マレーシア留学中に、現地の大学オーケストラにキーボードで参加したこともあります。そのオーケストラは、クオリティが高いわけではありませんでしたが、自分たちもお客様も楽しむための工夫をこらしながら舞台が施されていて、印象に残る体験でした。
そんな経験があったからこそ、私の中で「音楽」という存在が大きくなったんです。
聞き手:今回のサマーキャンプに参加したのも、そういう経験がきっかけになりましたか?
前山:もちろんそうですが、Amasiaが掲げているビジョンや方向性が、私の価値観と似ていると思ったんです。「1人1人の個性を最大限に発揮した結果、調和が生まれる」というAmasiaのオーケストラが、私が理想とする社会の縮図でした。
また、私はこれまで、自分の価値観について考えることが多かったんです。その価値観の表現方法として、「人」「自然」「音楽」という自分の心が惹かれるものを用いたかった。でも、そのためのプロセスや、方法がわからない。だから、そのヒントを見つけるためにキャンプに参加しました。
いろんな人との出会いもキャンプで得られたもの
聞き手:Amasiaのサマーキャンプだからこそできたことは。
前山:今まで全く違うバックボーンで生きてきた人と、色んな話ができること。普段は、秋田での友達からのフィードバックしかないけれど、ここではオーケストラと結びつきが深い人たちと話し、何を感じているのか、直に聞くことができます。他にも、セッションの講師の先生方や、芸術監督の木許先生は、自分が「会おう」と思って簡単に会える方々ではないですよね。そういった出会いの数々は、このキャンプならではのものだと思います。
聞き手:リハーサルやセッションを通して感じたことは?
前山:1番印象的なのは、運営の方々や講師の先生方は、私たちが感じる問いに対して、常にヒントをくださるということ。
例えば、リーダーシップについてのセッションは、自分がもともと関心を持っていた分野だから気付きが多くて、意見もたくさん持つことができる。でも、空間やホールに関するセッションでは、今まで「ホール」という存在を意識したことがなかったから、何も発見できなかったんです。だけど他の人が、自分では発見できなかったことに気づいているところを見ると、その場面に立ち会えて良かったな、と。
Amasiaで用意されているプログラムのおかげで、「リーダーシップ」「オーケストラ」という主軸を多方面から見つめられるから、本当に勉強になります。だからこそ、一人一人の個性に気づくきっかけもたくさんあるんです
このキャンプのような「場作り」をしてみたい

聞き手:参加前、前山さんご自身で「こうなりたいな」という理想を持って参加されたと思います。実際に参加して、その理想に変化はありましたか?
前山:私はずっと、このサマーキャンプのような、「場作り」がしてみたかったんです。アプローチは何であれ。
だけど、実際にその「場」に来てみて感じたのは、場を作ることができる人って、すごく人間性が豊かなんだということ。
他にも、自分も新たなことに気づくことができて、他の人もそれに反応して、という場が好きだと感じました。
初日に初めてメンバーの顔を目にしたときよりも、今(3日目)の方が1人1人に対する自分の思いが違うんですよね。それは、リハーサルやディスカッションはもちろん、寝食をともにしているからだし、それに加えて「オーケストラ」というテーマを通して集まれたものだから。
聞き手:今後前場作りを行うならば、前山さんの場合「人」「自然」「音楽」にまつわるものになるんでしょうか。
前山:それはまだ分からないですね。
木許先生が、「他者とのコミュニケーションにおいて、自分の引き出しを多くすることが大事。それは音楽も同じで、いろんな音色などの引き出しがあるのが、プロの演奏家」とおっしゃっていたんです。今私は、場作りを行うための「引き出し」が欲しいかな。
聞き手:Amasiaのサマーキャンプを終えてから、「こうしたい」「こうなりたい」という理想はありますか。
前山:小さなことでもいいから、自分で「場作り」をやってみたい!挑戦していく中で、わかっているつもりでも知らないことや、「こんなことがあるなんて!」という発見があるかと思いますが、とりあえずはやってみたいです。
そして、こうして音楽以外の場作りをしている人にも、もっと会いに行きたいな。
聞き手:やはり場作りをしていきたいとのこと。先ほど「場作りができる人は、人間性が豊かた」とおっしゃっていましたが、前山さんもさらに豊かになっていくんでしょうね。
前山:むしろ、今までも「自分がどんな人間になりたいか」ということしか考えてこなかったんです。だけど、それをブラッシュアップする手段がわからなくて。
「こういう人になりたい」と思ったとしても、計画的になれるものではないですよね。目の前のことに1つ1つ向き合った結果、そうなれるんだと思うんです。その向き合うきっかけを、これから掴んでいきたいです。